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カフェと囲碁 ひだまり

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囲碁の席料を投げ銭化します

2021.08.23 mon
ひだまりについて
囲碁の席料を投げ銭化します

はじめましての方もそうでない方もこんにちは。
世界を囲碁で魅了する女、Mayuです。

本日Youtubeにて公開致しましたが、
2021年10月より囲碁の席料を投げ銭化することに致しました。
それについての理由、および経緯、今後考えていることについて
今回は皆さまにお伝え致します。

 

【経緯】

以前より「1、2時間しか滞在できないお客さまと、10時間滞在するお客さまの金額が同額なのはおかしい」
そう感じていました。
なんども料金システムについて考えて来たのですが、
正直「面倒だな」と思ってなかなか改善できずにいたのが実情でした。

しかし、お店を20都市にこの先展開していくという夢を持った時に、
現ひだまりでこれを解決しなければ、先に進めないという壁にぶちあたりました。

そして、火曜日20:30~Hidamari Channelにてライブ配信している「スナックまゆ」にて
視聴者の皆さまに、席料についての問いかけをしました。

その時に、色んなご意見を頂いたのですが、
「囲碁は特殊なので、カラオケや漫画喫茶、ボードゲームカフェなどと同じ設定にするのは無理だ」
という結論にいたりました。

こっちを立てれば、こっちがだめ。
そういう思考のループにはまったときに、席料を頭のなかから無くしました。
そうしたらシンプルに「金額はお客さまの満足度により、お客さまが納得いく金額をお支払いいただくスタンスに変えよう」
というアイデアが浮かびました。

囲碁業界において常識はずれだと思います。
しかしこれはできるのは「カフェ」が大前提としてある、ひだまりにしかできないことだと考えたので、
踏み切ることにしました。
怖い気持ちよりも、ワクワクする気持ちが勝ったからです。

 

なぜ投げ銭化しようと思ったかという理由は3点あります。

 

1.席料の成り立ちの根拠の仮説

そもそも、1日●●円というものがどういう経緯から成り立っているのか?わかりませんでした。
わからないので、私の祖父や母が経営していたころの数字を眺めながら、
ある一つの仮説にたどり着きました。

「もともとは広い部屋を持っている人の家で集まっていたのではないか?」

つまり、昔は囲碁を打つ人がたくさんいました。

どうせならその地域にいる碁打ち色んな人と打ちたい!
ということで、碁盤をたくさん置ける方の1室を借りて、定期的に囲碁会を開催していた。
家賃は発生していないものの、そのお家の奥様がお茶を出してくれたりお菓子をだしてくれる。

気を遣ってもらっているのに、何も払わないのは申し訳ない。
ということで、一人500円ずつ払おう。

そんな成り立ちだったのではないかと、
私の家業については思っています(あくまでも仮説です)。

そう考えると、時間制ではなく1日いくらというざっくりした料金設定になったことを
大いに理解することができます。

昭和の時代、そしてヒカルの碁ブームの時は
日本棋院もそのような料金システムなので、誰も疑うことなくその設定のまま時代は流れました。

そして現代まで来てしまった。

日本棋院の料金設定はいまだ変わらず、
碁会所というところは基本的に席料システムをどのお店もとっているので、
疑ったり変えたりすることもなく、
囲碁人口が減少した今まで来てしまった。

勇気を持てる人がいなかった。

しかし、ひだまりに関しては「カフェと囲碁ひだまり」という名前のとおり、
飲食業として営業している。
私たちは挑戦できるチームである。

ならば、カフェなのでワンオーダーは必須として、
囲碁のサービスに対しての金額は無くすことも可能ではないか?と考えました。
古い慣習を断ち切れるだけのものは培ってきたはず。
「囲碁を打たない人に向けたお店作り」をしたように。

 

2.他の業態の料金システムが導入できない

似たような娯楽からアイデアを持ってこようとしました。

例えば、カラオケ。
1時間●●円。13:00-17:00のサービスタイムは●●円。

例えば、まんが喫茶。
1時間●●円。3時間パック、5時間パックで●●円。

どちらも考えたのですが、まず大前提として囲碁とこれらが全く違う点が3つ浮かび上がりました。
1.お客さまによってレベルが違う
2.2人で対局するもの
3.対局時間が1局につき平均40分

カラオケもまんが喫茶も、お店についた瞬間から、
そのお客さまの目的を達成することができます。
そして、カラオケは1曲あたり最高でも7分なので、制限時間に退室が可能です。

しかし、囲碁に関しては、
1.棋力がそれなりに近い方がお店にいて
2.人間としての相性が合っており、
3.お客さまが選んだプラン時間内に対局が終わらない可能性が大いにある

 

なので、他の業態のシステムを導入することで無理が生じると思いました。

また、1局●●円というアイデアも頂いたのですが、
対局が始まって15分ほどで対局の形勢が大きく決まってしまい、
すぐに終わってしまった場合、負けた側の方の気持ちを考えると、
その1局に対して、気持ちよくお支払いいただけないのでは?と思いました。

そのため、他の業態の仕組みは囲碁のお店では導入ができない。と考えました。

 

3.囲碁は開かれるべきもの

ひだまりは「囲碁を楽しむ人を増やす」ことをミッションの一つに掲げています。
そして、ひだまりで働く一人一人のミッションステートメントにも、そのような記載をしています。

Mayu:囲碁インフルエンサーとして囲碁を打たない人に楽しさを伝えられる
つかさ:囲碁を一番楽しく教える人になる
まる:囲碁の魅力を伝えられる、実力のある碁打ちになる

世の中の大半の方は囲碁の魅力をしりません。
むしろ「囲碁って白と黒のやつ」というくらいの認識しかありません。

「まゆさんに会いに来て、すぐに囲碁ってできる環境なのにやりたいと思わないのはなんでなんだろうな~。
情報がなさすぎるからかな」

先日ひだまりに来てくれた友人から言われた言葉です。
その言葉を言われて「はっ」としました。

当店はカフェ利用だけのお客さまが多いです。
なので、「囲碁ってオセロではない難しいボードゲーム」という認識のお客さまに、
得体のしれないものに対していきなり
「1500円ください。」

っていうのは、私たちのエゴでしかないことにようやく気が付きました。
気が付くまでに4年半もかかってしまいました。遅すぎます。。

気が付いたからには、行動を起こしたい。

そう思ったときに、囲碁のハードルをさげるには、

ひだまりにおいては囲碁の料金を設定せず、
お客さまの満足度で支払う金額を決めてもらう

それがベストの選択だ。
ということに行きつきました。

 

気が付いてしまった囲碁業界の落ち度

以上が、囲碁を投げ銭化する理由なのですが、
私たちは囲碁のお店でサービスを提供する者として、
「よりよいお店作り、自分たちの成長のためにも投げ銭化は大事」
そう考えて踏み切ることにしました。

これも囲碁の歴史について考えて、ある一つの考察ができたからです。

「囲碁人口の減少は時代の流れだけではない」

5年半前、母の後を継いで囲碁業界にはいり、
碁会所の大先輩やお店のお客さまから囲碁業界についての話をたくさん聞きました。

「囲碁を打つ人は昔と比べて激減している」
「なぜならば、時代が進んで遊びが増えた。インターネットで無料で囲碁が楽しめるようになった。」

 

誰もが口をそろえてそう言いました。
私はそれを鵜呑みにしていました。

しかし、最近ひだまりのサービスについて見直すようになり気が付きました。

囲碁人口が多かった時に、囲碁を教える人に対してどれだけの教育をしたのか?
囲碁のお店の店主が、お店にいるお客さまが気持ちよく過ごせるように、どれだけ配慮していたのか?

ひだまりを作った4年半のなかで、
ひだまりにしか来たことがない、
他は怖くて行けない
というお客さまをたくさん見てきました。

そういうお客さまと他の碁会所に行ってツアーしたいね!
なんていう話をしていた矢先にコロナウィルスが蔓延してしまいました。

他は怖くて行けないというお客さまに話を聞くと、
大抵の方がこう答えました。
「強い方に高圧的な態度をされた」
「口出しされて不快な思いをした」
「マッタをたくさんされてフェアな気持ちで対局できなくなった」
などなどです。

事業を承継してから囲碁をはじめたので、
このような不快な気持ちは痛いほどよくわかります。
だから、そういう現場を見たときは注意をするようにしています。

もちろん、上手のかただけでなく、
下手のかたでも、ルール違反をしたり、口出しをされる場合は注意をしています。
つまり、店主がそのお店の秩序を保っていれば、
こういった出来事はおきないはずなのです。

しかしこのようなことが起きるというのは、店主の力不足なのではないかと思います。
ひだまりでもこういうことって十分に起こりうるし、
非情にデリケートな部分なので、私がもっとも気を付けている部分ではあります。

そう考えたときに、1500円を席料として当たり前にいただくという仕組みは、
私たちを甘やかしている仕組みなのではないか?と思ったのです。

「お客さまが満足いただけなければ返金します」
という通販の広告をよく目にします。
これって私たちにも言えることなのではないか?と気が付いたのです。

 

「怖い」

アイデアを思い付いた時に思ったことです。
今まで当たり前にいただけていたものが、0になるかもしれない。

でもそれ以上にわくわくした自分がいました。
誰もやったことがないことに挑戦することが、
世の中に対して「挑戦しようよ」と言える切符だからです。

とはいえ、私のお店ですが一緒に働く仲間の意見は必要です。
ドキドキしながら、八段塾塾長のつかさ先生や、
7月から仲間入りしたまるちゃんにこのアイデアを伝えました。

「相当おもしろそうですね!やりましょう!
こういうアイデアはまゆさんが言わないとやれないですから!」
つかさ先生は笑顔で背中を押してくれました。

「働いて間もないのに、料金設定の話までしてくれてうれしいです。
ありがとうございます。」
まるちゃんも勇気をくれました。

4年半前にひだまりを作ろうと思ったときも、
碁盤テーブルに投資した時も、
たった一人で決断しました。

でも今は、こうして一緒にやろう!楽しそう!って言ってくれる仲間がいるということに
改めて気が付くことができました。

 

囲碁業界の常識を破る

今までそういう想いでやってきて、なんとかやってきました。
ここにきてまた挑戦?って思いますが、
頭に思い浮かんだ違和感はぬぐいたいし、
挑戦したいと思ったことには挑戦したいので、やります。

正直、お客さまの立場で考えたときに、
最初は非常に戸惑うと思います。

システムを理解できない人はどうするの?
外国人のお客様はどうするの?
本当に0円もありなの?

など、解決すべき課題は山積みです。
失敗する可能性だってあります。

しかし、私たちは考えてたくさんの山を乗り越えてきました。
だから今回も必ずできるし、お客さまにより囲碁を楽しんでいただけて、
囲碁をやる人を増やせるように行動していくので、
この新しい仕組みを温かい目で見守って「またなんかやってるな、おもしろそうだな」と
思っていただけたらうれしいです。

長文になりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございます。
皆さまとお会いできる日を心待ちにしております。

Mayu